「必殺!PREYボール!」

モキュメンタリー日和⑩

やぁ、僕はPEOPLE。
3人揃えば文殊の知恵!

<前回までのPEOPLEは>
暗黒卿クロエが放った巨大ネズミの群れに襲われ、街はパニック状態!そう、今回はモンスターパニック映画的なあれ!もうそろそろ辛い!早く終わりたい!あと三話、頑張れ、やっつけろ、そう、いつだってやっつけだ!そんな感じで僕は、分身スーパーC級映画ヒーローPEOPLEとしてここ、アメリカ西海岸の小さな街、リトルトーキョーで逃げ回っている。

あっという間に巨大ネズミに埋め尽くされ、街はチーズみたいにバリバリかじられて、ボロボロだ。
リトルトーキョー市警と消防隊がネズミ駆除に奔走しているが、巨大ネズミ達は文字通りねずみ算式に増え続けている。
街の存亡がかかったこの一大事に、警察と犬猿の仲だった探偵ナイトサあーフの面々や、僕らWATALABO(そういえばそういう設定だった)も技術協力という形で巨大ネズミ対策本部に駆り出され、ネズミ退治に頭を悩ませていた。

「やっぱりギガマウスで良いと思う」
「なんかPC機器みたいでパッとしないなぁ」
「じゃあメガマウス」
「やっぱりPC機器っぽいよ」
「ねぇ、メガマウスのマウスはネズミのmouse?口のmouth?」
「いいじゃんそこは、巨大ネズミなんだから口もデカいし。ダブルミーニング的な?」
「mouthの方のメガマウスだったら実際にいるよ」
「え、いんの?なにそれ」
「サメだよサメ、深海に住んでる超口デカいサメ。それがメガマウス」
「うわー良いじゃん!B級サメ映画に出てきそう。戦慄!人食いメガマウス!みたいな」
「残念、主食プランクトンなんだわ」
「うわー残念、人食えよ、サメなんだから」
「いや普通は人食わないからねサメって。海亀と間違えて人に噛みついてるだけだから」
「ウソ、サメって亀食うの?最悪。めっちゃ歯の隙間に甲羅とか挟まりそう」
「そこは案外お煎餅かじるみたいな食感かもよ?」
「いや絶対無理だわぁ、歯欠けちゃう。つか亀って旨いの?」
「スッポン旨いから亀も旨いんじゃね?」
「いやぁ~、ミドリガメとか絶対臭いっしょ」
「そう言えば昔なんかのバラエティーでミドリガメ食う、みたいなのやってなかったっけ?そんで芸人がお腹壊してさ」
「それだ!」
「なに?」
「ネズミに毒の餌を食べさせるんだよ。それで奴等を一網打尽にする!名付けてPREY(餌食)ボール作戦だ!」
「あのね、今そういう話してんじゃなくて、巨大ネズミの名前考えてんの。脱線すんのやめてくんない?」
「そうだそうだ、それに前回の予告で“必殺!PRAY(祈り)ボール”って書いちゃったのをさりげなくEに修正すんなよ、セコいぞ」
「しょうがないだろ、間違えちゃったんだから!」
「ちょっと、メタ発言止めてよ、只でさえ崩壊ギリギリなんだから」
「そうだぞ、何が楽しくてこんなもん毎週書いてると思ってんだ!」
「うるせえ!気がついたらなんか書いちゃってたんだよ!ほんの出来心だバカ野郎!」
「もういいから、わかったから、名前考えて、ネズミの名前!」
「じゃぁもうあれでいいや、メガサイズで、“かじる”の“bite”から…」
「やめろ、それはもうただのPC用語だろ、そんなオチで終われると思うなよ!」
「毎回大したオチもついてないよ!」
「え、オチなんて必要?そんなもの誰が求めてるの?」

巨大ネズミ対策会議は凄まじく荒れた。
しまいには僕を含むラボスタッフみんなで乱闘になり、警察の方々に仲裁して頂いた。
そして巨大ネズミ対策本部の看板はPREYボール作戦に書き換えられ、みんなの平和への祈りも込めて、という意味で横に“PRAY”も書き添えることで落ち着いた。
巨大ネズミの名称の方は警察所長の一存でヒュージラットに決まった。案外悪くないな、とみんな思った。

ヒュージラット退治用のPREYボールはすぐさま完成し、街中にバラまかれ、凄まじい効果を発揮した。
中に毒ではなく接着剤入りキャラメルを仕込み、それがヒュージラット達の歯に詰まりまくって、酷い虫歯になり、ものを食べれなくなって餓死したのだ。

こうして街は救われたが、ヒュージラットの破壊の爪痕は深刻だった。
僕らは三人で積み上げられた瓦礫の上に立ち、街を見渡した。酷い有り様だ。ネズミの死体とフンだらけ。家を失った人々が公園に集まって、腐臭に鼻をつまみ、毛布にくるまって炊き出しの列に並んでいる。
公園の隅では野球をしている子供達も見えた。彼らはまだこの災害を実感出来ていないのかもしれない。でもその光景はひとつの救いのように思えた。

クロエ、君は一体何を求めてこんな酷いことをしたんだ。君はコナンくんを小さくした薬を開発して年金問題を解決したいんじゃなかったのか?

「私、黒の組織にはなれなかったわ」

不意に声がして振り替えると、そこにクロエが立っていた。

「おま、どこいってた!何てことをしてくれたんだ!街がめちゃくちゃじゃないか!」僕は突然のことに面食らいながらも、クロエを捕まえるべく三人で素早く彼女を取り囲んだ。「なぜこんなことをしたんだ!」

クロエは崩壊した街をゆっくりと見渡し、それからうなだれて、小さな声で言った。
「コナンくんを小さくした薬は作れなかった。でも逆に、いろんなものを大きくすれば相対的に私達が小さくなるよと教えてもらって、その相対的って響きが相対性理論みたいで素敵だなって思って、夢中になって実験を繰り返したの……でも、気付いたわ……」
「……コナンくんは小さくなったんじゃなくて、若返ったんだよ……」
僕がそう言うと、クロエはペロッと舌を出して自分の頭をコツンと叩いた。「テヘ、間違えちった」
「間違えちったじゃねぇよ!」「バカお前、バカ!」「信じらんねぇ、マジかこいつ!テヘペロで誤魔化せる事態じゃねえだろが!」
「ねぇ、数年前まで黒幕はアガサ博士だって言われたてたのに、今ではミツヒコ黒幕説が最有力なんですって、知ってた?」
「知らねぇよ!つかお前コナンあんまり知らねえのかよ!」「コナン読めよ!」「そうだコナンちゃんと読めよ!俺も読んでないけど!」
「私どっちかって言うと未来少年コナンの方が好きかな」
「うるせえ、そのネタ三十代でも通じるか怪しいぞ!」「青山剛昌先生に謝れ!」「あと宮崎駿監督にも謝れ!」
僕らは三人がかりでクロエをディスりまくり、そのうち段々テンションが上がってしまってラップにのせて更にディスりまくったが、クロエは「すごい!韻の踏みかたがタイトだわ!」と言って大喜びし、ヒューマンビートボックスを始めたので、僕らはそれ以上ディスるのを諦めた。

「ところでクロエ、君に相対的にどうのこうのと言って巨大化を勧めたのは誰だ?」
「え?」クロエは目を丸くした。「あなたじゃないの」
「なんだって?」
「あなたよ、あなたが言ったのよ」

僕はPEOPLE!

分身スーパーメタ発言者さ!

残り3人!の、筈だが…

次回のPEOPLEは

「Dance with Walking Dead」

お楽しみに!