「Dance with Walking Dead」
モキュメンタリー日和⑪
やぁ、僕はPEOPLE
いよいよセミファイナルだ!
<前回までのPEOPLEは>
暗黒卿クロエは見事PEOPLEのお手柄で逮捕されたが、まだその裏には彼女をそそのかして様々な巨大化事件を引き起こした黒幕がいるらしい!しかもクロエはその黒幕こそ僕だと言った!なんやかんやでありがちな展開に落ち着きつつあるけど果たしてあと二話で終わるのか?いいんだよ、オチなんて無くたって!はやく普通のブログに戻りたぁ~い!
僕はクロエの言ったことが気になって、11人の分身全員の行方を確認してみた。
まず、今ここにいる分身は3人。とりあえず分身A、B、Cとしておこう。
そして今ここにいない8人の分身うち、前々回のラストでネズミに噛まれた分身と、 トモロウ君に千年殺しでケツの穴を貫かれて下半身付随になった分身の二人は仲良く入院中だ。
スコーン屋の分身2人は店の経営に大忙しで、悪事を企む暇など無い。
ジGタンクと共に山へ芝刈りに行った分身とはなんとか連絡がついて、今はジGと仲良く川で洗濯中だそうだ。
それからそうだ、トモロウ君の策略でサカタ化した分身がいた。あいつはラボの地下室に閉じ込めている。
えっとこれで……6人か? 残り2人は……あ、トモロウ君に虐められてラボのトイレに引き籠ったまま出て来なくなってしまった分身が1人いた!(凄いなトモロウ君、結局僕の分身を3人も再起不能にしたのか)
で、残りの1人は……誰だっけか?……いついなくなったんだっけ!? いや、そんなこと覚えてねえよ、そんなんわざわざ計算して書いてねえよ、知るかよ!
「ねぇ、ちょま」突然分身Bが青ざめた顔をして言った。「ラボって、ジGタンクにやられて、倒壊したよね?」
「倒壊したけど……それがなに?」
「地下室に閉じ込められてたサカタ化した分身も、トイレに引き籠ってる分身も、どっちもラボにいたってことだよね?あいつら今、どこにいんの?」
ぞっとして、僕らは急いでラボ倒壊跡地へ向かったが、悪い予感は的中した。
サカタ化した分身を閉じ込めていた地下室の扉は壊れて開きっぱなし。もちろん中にサカタはいない。ラボ倒壊の時に逃げ出したのだ。
せめてトイレの引き籠りだけでも救出せねばと瓦礫の山を掻き分けていると、突然分身Cが瓦礫の中で「ぎゃ!」と悲鳴を上げた。
「どした!」「どしたどした!」
悲鳴を上げた分身Cを見ると、Cの後ろにはAでもBでもないもう1人の“僕”が立っていて、そいつはCの肩にガッツリと歯を立てて噛みついていた。
「なんだ!こいつは?行方不明の残りの1人か!?」「いや違う、よく見ろ、あいつなぜかズボンを下ろしたままだぞ!きっとトイレに引き籠ってたやつだ!てゆうかトイレに引き籠ってたやつって呼びづれえな!トイレの花男でいいや、花男!」
花男は死んだ魚のような虚ろな目をして、ダラダラとヨダレを垂らしながらCの肩に噛みついている。「いでー!いだだだだ!」Cは後ろ足で花男を蹴って必死にもがいているが、花男は微動だにしない。
「おいやめろ花男!落ち着くんだ!お前がトイレに入ってる間に悪口言ったのはCじゃない!もちろん俺達でもない!あれは全部トモロウ君の仕業なんだ!Cを離してやれ花男!」
僕らがいくら叫んでも花男は全く反応を示さない。そうしているうちにCの衣服がみるみる真っ赤に染まっていく。花男の歯が肩の肉に食い込み、血が滲んでいるのだ。
「おい、花男のやつ、普通じゃない、おかしい。あれは何かの病気なのか?」
花男の表情にはまるで生気がなく、しかし顎だけは頑なにCの肩に食らいつき、万力のような力を込めて肉を噛み千切ろうとしている。
「おい、なんか、Cのヤツもヤバそうだぞ」
Cは体をびくびくと痙攣させていた。もう痛みによる悲鳴もあげず、その目からは急速に光が失われていき、口からはボタボタとヨダレが垂れ始めた。そこで花男は急にCを噛むことをやめた。
「おい、C、おま、大丈夫か?」
Cは呼び掛けには応えなかった。痙攣は徐々におさまっていく。
「おい、C、早くこっちに来い、今のうちに!」
「手当てしないと死ぬぞ!早く来い!」
僕らが叫ぶと、Cは死んだ魚のような目で僕らを見つめた。花男も僕らを見つめている。二人はふらふらとした足取りで近寄って来る。なにかをぶつぶつと呟きながら。
「……あ、よいとせのこらせのよいとせのこらせ… あ、よいとせのこらせのよいとせのこらせ……」
「サカタ化だ!Cも花男も、サカタ化している!」
「そんなバカな!サカタ化はサブリミナル効果がないと発症しない筈なのに!」
「おそらく閉じ込めていている間にアフォノサ型血液が進化して、感染力を持ったんだ!今あいつらに噛まれると、サカタ化するぞ!」
「それってつまりサカタゾンビってことか!」
僕らは必死にその場を逃げ出した。幸いサカタゾンビは手足をくねらせての横歩きしか出来ないので余裕で逃げ切ることができた。
そのまま急いで警察署へ駆け込んだが、こちらも既にサカタゾンビに襲撃された後らしかく、アホのサカタのテーマが爆音で流れる中がサカタゾンビ達が躍り狂っていた。
街も同様、道行く人々は皆サカタゾンビ化している。
誰も彼も、クロエもアウトレイジも探偵ナイトサあーフの面々も、みんなゾンビになってしまった。
リトルトーキョーはあっという間に新喜劇版ウォーキングデッドと化したのだ。
「こんなに繁殖力が強いなんて、異常だ。誰かが意図的にサカタ菌をばら蒔いたとしか思えない」
「確かにその可能性はある。そして尺的に、そろそろ黒幕が出てくるころだぞ!」
「その通り!黒幕は私だー!」
ババーンと、ぞんざいな感じで黒幕が現れた。
「やっぱ俺か。そりゃぁな、この話の登場人物はもう俺しか残ってないからな」
「あれだろ、お前どうせ行方が解らなかった最後の一人だろ?」
「オイ!もうちょっと丁寧に扱えよ!俺だぞ!?」
「あーごめん、いついなくなった俺だっけ?」
「Ride on Tideの回だよ!怒って居なくなっちゃった、No.11、怒りんぼだよ!」
「あぁー、そういう設定あったね。その後全然使ってないけどね、そのキャラ分け」
「な、俺ら今や、AとBだもんな」
「そういうところほんと、ちゃんとしろよ!」
「おおー、怒ってる」
「ちゃんとキャラ守ってる、偉い」
「いい加減にしろよお前ら!会話だけじゃなくてちゃんと容姿の描写とか書けよ!」
「そんな面倒くさいこと出来るか!会話文で構成するのが一番楽なんだよ!」
「そうだそうだ!そしてもう流れ的に一人減るタイミングだ!黒幕の怒りんぼ、俺はお前と心中してやるぜー、わあー」
「な、ななな、なにぃー」
「あぁ、やめろBー」
「それー」
「あーれー」
「Bぃーーっ、なぁ、なんてことだー、ああー、Bが黒幕の怒りんぼに体当たりしてサカタゾンビ達の群れに飛び込んでしまったー、うわー、なんてことだー、二人ともゾンビになってしまったー、ついにひとりぼっちになってしまったー、うわーん、ががーん」
僕はPEOPLE。
棒読みでお楽しみください。
ついにひとりぼっちだ。
次回のPEOPLEはいよいよ最終回!
「獄中To Do List」
さあ、早く普通のブログに戻ろう!