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2018/11/02

「気がつけばHuluばっかり見てる俺バカみたい」

モキュメンタリー日和⑥

やぁ、僕はPEOPLE。
8人いる。ひきこもりさ。

<前回までのPEOPLEは>
いろいろ頑張ったんだけど、なんかめちゃくちゃガックリ来ちゃった僕は、分身スーパーひきこもりPEOPLEとしてここ、アメリカ西海岸の小さな街、リトルトーキョーの片隅にある自宅の平和を守っている。

 

人間、時には休まなくちゃダメだ。
ヒーローだってそうさ。あのピタピタのタイツが急に嫌になって、ユルユルのスウェットを履いてXLのTシャツを着てヒップホップを聴く時だってある。それと一緒さ。少し頑張り過ぎた。

僕はトルティーヤチップスとタコスソースとビールとカマンベールチーズとワインといぶりがっこと焼酎をしこたま買ってきて、それらをつまみながらHuluで気になっていたドラマを一気見していった。

恋愛ドラマの中の恋人達は飽きもせずくっついたり離れたりを繰り返し
ヒーローはみんな身内に潜むラスボスに全く気付かないアホばっかりで
ホラーものは必ず誰かが定番のミスをやらかして、街はゾンビに襲撃され続けた。
その展開が解りきっているのに、僕は点滴でブドウ糖を注射されるみたいにただただドラマを見続けた。

そして時々、真夜中にコンビニへ行ってコーラとカップラーメンを買った。僕が行く時間帯は何故かいつもミニーリパートンのラヴィンユーが流れていた。なんてゆうんだっけ、歌がなくって、安っぽいエレクトーンみたいな音色で演奏されているダサいBGM。あぁいうやつ。チープさがやけに物悲しかった。
(どうでもいいけどセブンイレブンてやたらいつもデイドリームビリーバー流れてる気がする。)

 

そしてまた部屋に戻ってきて、薄暗い部屋の中を見渡す。
残りの7人の僕が背中を丸めて膝を抱え、LOSTのシーズン3を見ている。最悪な光景だった。
「おい、ラーメン買ってきたぞ」7人の背中に呼び掛ける。こんな暮らしをもう一週間も続けているのか……はぁ、…なんだかなぁ。「おい、ラーメン買ってきたって言ってんだろ!」……返事がない。
肩を叩いてみても反応がない。

一人の肩をぐいと引っ張って「おいこら!」と振り向かせると、ぎょっとした。 誰だこいつ?

顔が違う。僕の顔じゃない。他の分身達も僕じゃない。誰だお前ら?

家を間違えたりなんかしてない。こいつらみんな勝手に上がり込んできたのか? いや、すぐに違うと解った。

全員知らない顔だが、全員が同じ顔をしている。そして分身だからこそ解ることだが、みんな身体は確かに僕のものだ。顔だけが違う。しかもみんな僕を見ているようだが焦点は定まらず、呼びかけにも応えず、ずっと何かをブツブツと呟いている。

「あ、よいとせのこらせのよいとせのこらせ…  あ、よいとせのこらせのよいとせのこらせ… 」

なんだろう、何かの呪文のようにも聞こえる。でもよく見ると、この顔、なんかどっかで見覚えがあるんだよなぁ。うう、どっかで見たことあるんだけど、思い出せない。 なんか、元衆議院議員の鈴木宗夫さんにスゴく似てるんだけど、ちょっと違う、誰だっけなぁこの顔!

考え込んでいると、分身の一人がおもむろに立ち上がった。彼の髪の毛が、まるで透明化していくみたいにどんどん薄くなって、禿げ上がっていく。そして完全にハゲになってしまうと、今度は手足をタコの様にくねらせながら横移動を始めた。うわキモい! うわ、ハゲの両隣の分身も立ち上がった!まずいぞ!
何かのウイルスや、分身能力の副作用か、あるいは遺伝子の突然変異か、理由は解らないがこの症状は進行し続けている!

僕はまだ剥げていない分身達の顔をバッチバッチ叩いた。「おい!起きろ!お前ら、知らないおっちゃんになってるぞ!顔が、なんか知らないおっちゃんになってるぞ!」わずかに反応がある。近くにあった金だらいを頭の上に落として気絶させると、おお!顔が徐々に戻っていく。僕は次から次へと金だらいを叩き落し、分身達を失神させていった。

しかし 頭が禿げ上がった一名に関してはどれだけぶっ叩いても元に戻らなかった。ニコニコしながら妙なダンス?を踊り続けている。取りあえず彼はリビングに残したまま、顔が元に戻った分身達と寝室へ移動して、この謎の症状について話しあった。
「いったい何がおこったんだ?LOSTのシーズン2ラストくらいから、まったく記憶がない」
「なんかずっと頭の中にキダ・タローの曲が流れてるんだけど、なんてタイトルだっけこの曲?」
「お前もか!?僕もだ、ずっとアホ!アホ!ってコーラスが聴こえる!」

原因について色々と考えを巡らせてみたが、全く見当がつかない。ラボのスタッフを召集して、調べるしかない。
僕らは剥げた分身を縛り上げて拘束し、ラボへ担ぎ込んで徹底的に調べあげた。

そして、ハゲを隅から隅まで調べ上げて出揃った様々な検査データから結果が判明した。

「結論から言うと、これはサカタ化と呼ばれる現象です。
特定の映像サブリミナルと音楽サブリミナル、二つを長期間浴び続けると人間の血中のアフォノ酸が上昇し、血液型はアフォノサ型に変異、同時に身体は徐々にハゲのオッサンに変身していきます。知能は著しく低下し、おバカさんになってしまいます。末期には骨盤が変形して歩行にも支障をきたします。横移動しか出来なくなるんです。そして完全にサカタ化した人間を元に戻すことは、出来ません。」

ラボは騒然とした。ウイルスや遺伝異常ではなく、サブリミナル効果だと!?
しかもサカタ化を引き起こす特定の映像と音楽は、何者かが意図的に僕の家のネットワーク(Hulu)に侵入し、海外ドラマの映像に混ぜて発信され続けていたのだ!一週間もかけて!

トモロウ君は慎重な面持ちで言った。
「つまり、これは所長をアホなオッサンにする為に誰かが仕組んだ罠です。所長は、謎の敵に、命を狙われています」

来たこれ!

僕はPEOPLE!!

7人いる!

何者かに命を狙われているスーパーニート!!

次回のPEOPLEは

「友郎青年」

お楽しみに!

2018/10/26

「恐怖、Dance Lesson 地獄」

モキュメンタリー日和⑤※前回分がなんか先週金曜日に更新されませんでした。すいません。
「恐怖、Dance Lesson 地獄」

やぁ、僕はPEOPLE。
10人いる。分身スーパースコーン屋さ。

<前回までのPEOPLEは>
ワタラボでイチゴを増やす実験をしてたのをうっかり忘れてて、街は巨大イチゴだらけに。そして僕は分身スーパースコーン屋PEOPLEとしてここ、アメリカ西海岸の小さな街、リトルトーキョーのおやつタイムを守っている。

スコーン屋に転職して思ったのは、スコーンて食べるとすごく口の中がモサモサするってことだ。
口の中の唾液が全部持ってかれる。そもそもドリンクが必要不可欠な食べ物なんだ。

だから紅茶をセットで売ったり、しっとり仕上げた生クリームをのせたりして、なんとかモサモサしないよう創意工夫した。
そのかいあってか、PEOPLEスコーンの生地はサックサクなのにしっとり、奇跡のスコーン!と評価され、食べログは一時的に4.1まで星がついた。

商売が軌道に乗ってからは移動販売も始めた。
5人がラボでスコーンの生地を練り、残りの5人はそれぞれ車に乗って、オフィス街で販売する。
この商法で一番売り上げが良かったのは、意外にも分身No.9のゲスだった。ランダムにハート型のスコーンを混ぜて売ったのがOLにウケたらしい。
生地やセットメニューの開発は分身No.10の研究者が嬉々として取り組んでいた。スコーン王に、彼はなる、らしい。

だからスコーン事業はその二人に任せて、残りの8人は別のことをやることにした。

正直、これまでにコメディアン、劇団員、スコーン屋といろいろやって来たが、どれも下北沢っぽい仕事ばかりだった。古着屋で働いたらコンプリートだ。
でもやっぱり僕は、このリトルトーキョーのヒーローになりたい。分身能力をもっと正義の為に役立てたいんだ。

そして僕は、これまでの成果を振り返ってみて、あることに気が付いた。

それは、分身にバラバラなことをやらせると一人に戻った時に経験値は均一化されてしまうが、全員に同じ作業をさせると、一人に戻ったときに非常に高い熟練度が得られる、ということだ。
劇団もそうだ。 一人一人の演技は平凡だったが、一つの台本に沿って意思共有することで、全体の台本熟読度や、全員で協力し合うパートは異様にレベルが高かった。
スコーン屋を始めた時も、何よりも好評だったのは生地だ。それは5人が同時に開発を行ったからだ。

僕はこの特性を生かしてヒーローとしての身体能力を磨くべく、空手道場に入門したが、すぐ追い出されてしまった。
「8人分の月謝を払えないなら出ていけ」と言われたのだ。確かに、こちらは元々1人でも、向こうは8人に教えなければいけないのだから、手間は8倍だ。
同じ理由で柔道、ボクシング、コマンドサンボ、システマの道場から追い出された。

しかし僕は諦めなかった。
要は体を動かすということに慣れるのが大事なのだ。別に格闘技でなくたっていい。僕は何だって他人の八倍のスピードで習得できるのだから。

で、僕はストリートダンサー達にダンスを教えてもらうことにした。

僕は瞬く間に上達していった。
ストリートダンサー達も僕の上達ぶりを絶賛した。「天才的な成長スピードだ」と。
そしていつも何かに踊らされているように受動的な日々を過ごしていた僕だったが、これからは能動的に、自分から踊っていこう、そう、人生はダンスなのだ!自分の人生をちゃんとステップしていこう!と、よく解んない悟りを開くほどダンスにのめり込んでいった。

そしてある日、僕のレッスン風景を見学に来た助手のトモロウ君が、こう言った。
「所長、EXILEのぐるぐるするやつ、まだやってたんですね。すごく上手になりましたね。上手すぎて、もうあんまり笑えませんね」

……そして僕はダンスをやめた。

そう、結局は、最初となんにも変わっていない。
ヒーローを目指していた筈なのに、またEXILEに辿り着いてしまった。文字通り同じところをぐるぐるしているだけだったのだ。

そして僕は、なんだか全てが馬鹿馬鹿しくなって、がっくりきた。

僕は「PEOPLE」

8人いる。

今は特に何もしてない。強いて言うなら引きこもりだ。

次回のPEOPLEは

「気がつけばHuluばっかり見てる俺バカみたい」

お楽しみに!

2018/10/19

「バイオハザード!怪人Strawberry出現」

モキュメンタリー日和④

「バイオハザード!怪人Strawberry出現」

やぁ、僕はPEOPLE。
10人いる。分身スーパー劇団さ。

<前回までのPEOPLEは>
ワタラボでイチゴを増やす実験をしてたら培養液を浴びちゃって、自分が増えちゃったってわけ。
それで僕は分身スーパー劇団PEOPLEとしてここ、アメリカ西海岸の小さな街、リトルトーキョーの演芸を守っている。

劇団を始めた僕ら10人が、最初に選んだ演目はもちろん、美内すずえ先生の名著にして世界で最も偉大な演劇マンガ「ガラスの仮面」だ。

前回の反省をちゃんと踏まえて、今回は気合いを入れすぎずにリラックスして台本を考えてみた。
そもそも男の僕が分身しているのだから、劇団PEOPLEは男しかいない。
そこを逆手に取って、男だけで演じる「ガラスの仮面」を、面白おぞましく、失笑を買うことを目的に台本を書いてみたのだ。

これが、なんと、ウケた。

僕らはあっと言う間に、リトルトーキョーの「リトル歌舞伎町」というオカマバーで、毎週末に昼夜二公演もやらせてもらえるくらい人気になった。ファンは基本的に髭の濃いオッサンばっかりだったが、みんな口を揃えて「恐ろしい子……‼️」と称賛してくれた。
僕はようやく自分の居場所を見つけた気がした。それが素直に嬉しかった。

だけど、おっかないこともあった。
オカマバー「リトル歌舞伎町」はシノギの15%をMIFUNE-GUMIに納めていて、だから当然、時々YAKUZAが店に顔を見せに来る。もちろんヒロユキサナダ似のイケメン若頭、ヤクザヒーローの「アウトレイジ」もやって来た。

僕がサインを貰いたくてモジモジしていると、アウトレイジは気を利かせて近寄ってきてくれて、僕の耳元で静かにこう言った。
「その力を妙なことに使ったら、お前の分身の指を順番に切り刻んでやる。全部で何本あるか今のうちからよく数えておけ」
シビれた。脅し文句がめちゃカッコいい。マジでダークヒーローって感じ。彼は独自の情報網から僕の能力に既に気づいていて、見張らせていたらしい。すげぇイケてる。ゴッサムシティーって感じだ。
そんな毎日。ヒャッハー!

街は相変わらず僕の助けを必要としていないし、僕は僕で幸せだし、このまま特になんの問題もなく、僕はリトルトーキョー ゴールデンアロー賞を夢見て稽古に励む日々が続くんだろうな、なんて思い始めていた矢先、妙な事件が起きた。

リトル歌舞伎町の向かいのはなまるうどんが、巨大な植物のツタのようなものに絡まれて、ドアが開かなくなってしまったのだ。たった一晩の内に。

翌日にはその隣の丸亀製麺もツタに絡まれていた。
更に翌日は山田うどんも、うどんのウエストも、イタリアンみかづきもだ。
やけにうどん屋ばかりがツタに絡まれるので蕎麦屋の陰謀かと思われたが、イタリアンみかづきの店主が「うちはうどんじゃない」と言い張って、そもそもみかづきがいったい何なのかをみんなで議論するうちにリトルトーキョー中がツタまみれになってしまった。
しかも、ツタは奇妙な緑色の果実を実らせ、日に日に大きくなっていく。一番最初に実った果実は既に軽自動車くらいのサイズになっていた。

果実の表面にはニキビみたいなブツブツがいっぱいあって、そのブツブツのひとつひとつから毛が生えている。すごくキモい。果たしてこんなに気持ち悪い物体が地球上にあるだろうか?
僕はなんかすごく嫌な予感がして、その気持ち悪いアバタの果実の表面を削ってラボで調べてみたら……イチゴだった。

すぐにピンと来た。うちのラボで育ててた、分身イチゴだ!いつの間にか野生化して、しかも巨大化までしている!
イチゴのツタは水道管やアスファルトを破壊し、ビルもハイウェイも締め上げ、都市機能を破壊しながらどんどん成長している。
このイチゴの元凶が僕の研究によるものだとアウトレイジにバレたら、僕の指が全部ぶった切られてしまう。

僕はすぐにラボのスタッフを全員集めて、巨大イチゴの名前を考える会議を開いた。
何はおいても名前がなければ始まらない。それも、出来るだけ凶悪で、戦いがいのある名前がいい。
様々な意見が飛び交った。スタッフ全員が、分身ヒーローPEOPLEの活躍を信じて日夜決めポーズを考えていた頃の興奮と熱意を思い出していた。
そして「ビオランテ」という非常に凶暴そうな名前を思い付いたけれど既に「ゴジラVSビオランテ」という作品があったと知り愕然としているうちに

リトルトーキョー中の巨大イチゴは真っ赤に色づいてしまった。

これから一体、どんな悲惨なことが巻き起こるのか、誰にも想像がつかなかった。
あのブツブツからちっちゃいオッサンがわらわら出てきてみんなの足の小指を金槌で叩きまくるかもしれない。
あのブツブツは全て瀕死だけどなかなか死なないセミになって、街中で蝉ファイナルし続けるかもしれない。
なんということだ。この世の終わりだ。
さよならリトルトーキョー!さよならぼくの愛した人々!さよなら!さよなら!

それからほどなくして、イチゴは全て収穫され、リトルトーキョーはアメリカ中のイチゴジャム生産地のナンバーワンになり、ジャンボイチゴの街として知られるようになった。

僕らはラボで、イチゴジャムによく合うスコーンを開発して、この空前のイチゴブームに見事に乗った。
他にも商魂たくましい人々が沢山いて、リトルトーキョーはあっという間に復興した。怪我人もゼロだった。

後日、一つだけ刈り損ねたら巨大イチゴのブツブツから芽が出て、その様子があんまりにも気持ち悪いので #怪人ストロベリー としてインスタグラムを賑わせたが、すぐにみんな忘れていった。

今回は、何をやったのかよく解らなかった。

イチゴジャムは甘くて美味しいけど、あれは全部砂糖の甘さで、イチゴ自体は全然甘くない。「あまおう」とか偉そうなイチゴもあるけど、絶対にバナナの方が甘い。それなのに人々はイチゴを持て囃す意味が解らない。

その気持ちとよく似ていた……つまりなんていうか、今回はよくわかんない回だった。
いや、いつもよくわかんない回な気もする。うーん、どうなんだろう。

すると助手のトモロウ君が言った。
「イチゴはね、赤いから、いいんですよ」

ぜんぜん意味が解んないけど、昔、クロエも同じことを言っていた気がした……

僕は「PEOPLE」

指は無事、100本ある。

分身スーパースコーン屋さ。

次回のPEOPLEは

「恐怖、Dance Lesson 地獄」

お楽しみに!

2018/10/12

「お笑いバトル Ride on Tide 2018」

モキュメンタリー日和③

やぁ、僕はPEOPLE。
11人いる。分身スーパーコメディアンさ。

<前回までのPEOPLEは>
ワタラボでイチゴを増やす実験をしてたら培養液を浴びちゃって、自分が増えちゃったってわけ。
それで僕は分身スーパーコメディアンPEOPLEとしてここ、アメリカ西海岸の小さな街、リトルトーキョーの笑顔を守っている。

リトルトーキョーには毎年夏にビックなイベントがある。

それは「お笑いバトル Ride on Tide」

この大会はアメリカでも珍しいジャパニーズMANZAIスタイルで行われる。
この街では日本のお笑いは凄く人気なんだ。

日本のブームとは少しズレがあるかもしれないけど、今こっちでは「あらびき団」の再放送がゴールデンタイムで視聴率60%超え。空前のMANZAIブームだ。
正直、あらびき団は日本語だから何言ってるか全然解らないんだけど、あの、風船に入ってピョンピョン跳ねるおじさん、最高だよね!
それから、キュートンは毎年この時期にリトルトーキョーにやって来てライブをやってくれるんだ。スーパーボール並みに盛り上がる。アジカン最高!

そんなジャパニーズMANZAIが僕らは大好きで、好きが高じて開催されるようになったのがアメリカ人によるMANZAIコンテスト「Ride on Tide (ブームに乗れ!)」さ。

そこに僕は11つ子兄弟として出場した。
11人いるなんて、それだけで笑えるだろう?
1人がボケて、10人が突っ込むんだ。

でも一次審査で落とされた。

審査員には「ボケ役がリンチされてるみたいで可哀想」って言われた。確かに。ボケ役は10回もビンタされて、かなり痛かった。リトルトーキョーの人々はバイオレンスな笑いを求めていない。僕は好きなんだけどなぁ、カミナリ。

それで、いろいろ考えてみた。

例えば、11人の分身による人間ピラミッドMANZAI。組体操ね。
これは、まぁ、全員同じ顔で気持ち悪いから、やめた。
そうなんだよ、顔が同じだから気持ち悪いんだ。
そこで、11人全員に別々の変装をさせて、
性格の設定もそれぞれ個性を付けてみることを思いついた。白雪姫と七人の小人、知ってるだろう? あの、小人みたいな感じさ。のんきとか、ねぼすけとか、物知りとかね。

僕の性格を11分割して、配役はこうなった。

1 いいかげん
2 楽天家
3 パリピ
4 酔っぱらい
5 アニオタ
6 肉好き
7 葱好き
8 ゾンビ好き
9 ゲス
10 研究者
11 怒りんぼ

この配役は実にうまくいった。これまで画一的だった分身達はみんな個性を持つようになり、それぞれ独自の考えも持つようになった。
みんなのキャラクターを生かした台本を書き、毎晩みっちりと稽古して、ラボのみんなに披露したらとても面白いと言ってくれた。確かな手応えもあった。

そして僕は満を持して、Ride on Tide 2018 敗者復活トーナメントに挑んだ。そして見事落選した。
審査員からは「そういうのは劇団のオーディションでやりなさい」と言われた。

僕は酷く憤慨した。一体この審査員は何を言っているんだ、ラボスタッフ達はあんなに素晴らしいと絶賛してくれたのに、全く見る目がないじゃないか。
肉好きとゾンビ好きが同類に見なされてしまったことが失敗だったのだろうか?キャラ分けには成功していたはずなのに……

すると助手のトモロウ君が僕に言った。
「充実ばかり求めると、仕事も休日も全部慌ただしいものになってしまいますよね。それと一緒です。所長はもっと力を抜いて、リラックスするべきだったんです」

はっとした。彼の言う通りだ。僕は今まで如何に自分の能力を全部使いきるか、しか考えていなかった。
もっと純粋に面白おかしいものを求めるなら、分身二人で双子漫才をやった方がずっと話もまとめ易かったのだ……ところが僕は全員の個性を活かす為に台本を複雑にし過ぎて、結果、笑いゼロのミュージカルにしてしまった。
11人もいるのに、誰一人自分達のやりたいことも、やっていることも、客観視できなかったのだ。

そして気付いたときには後の祭り。分身達に芽生えてしまったいびつな個性をリセットすることはもう不可能だった。
そして分身No11、怒りんぼは、二度の落選への怒りを許すことができず、PEOPLEを脱退して、どこかへ行ってしまった。

なんてことだ…… 分身を失うだなんて。

そして僕らは10人で、この挫折から立ち直る為にミュージカル劇団を立ち上げた。

僕は「PEOPLE」

10人になってしまった。

分身スーパー劇団さ。

次回のPEOPLEは

「バイオハザード!怪人Strawberry出現」

お楽しみに!

2018/10/08

蛸と鉄板②

たこ焼きが先か、たこ焼き用の鉄板が先か、の議論の続き。

まず、
●「たこ焼きが先」説は、たい焼きの誕生過程を想像するとスムーズだ。

たい焼きは「鯛の形をした菓子を作ろう」という意思の元にあの鉄型が作られたことがよく解る。
雑に言ってしまえば、今川焼を鯛の形にしようとしたら生まれた食べ物だ。
だからたこ焼きの場合は「何かしら丸い形の食い物を作ろう!」と思ってあの型をデザインして、工場で鉄を溶かして鋳造したのだろう。

現に、たこ焼きの前身と言われている「ラジオ焼き」という食べ物は、形こそたこ焼きだが、中にはこんにゃくが入っていたという。

そう、初めはただ丸い、ということだけがトピックの食べ物だったのだ。

長く続いたお好み焼きの「円形」というマンネリを打破し、「球体」という、三次元的なアプローチに出た、その形状こそが肝なのである。
中身はこれまでコンニャク、牛肉、海老のすり身など様々な食材が試され、最終的に不動のセンターとなったのがタコである。
タコも自分の立ち位置はよく解っている。タコ焼きというグループから出た途端、一気に見向きもされなくなる。自分はあの球体の中でこそ人気者なのだ、ということを、タコは知っている。
つまり、たこ焼きとはフォルムが命、ハコ推しこそが正解なのだ。
うむ、実にしっくり来る理論だ。

では、
●「鉄板が先」説だが……実はこちらも捨てがたい。

というのも、タイ焼きの型はどう考えてもタイ焼きにしか使えないのだが、たこ焼きの、あの半球体の鉄型というのは、以外と汎用性が高そうで、そこが怪しいのだ。そう、実は諸説ある。

例えば、たこ焼き用の鉄板によく似た型を使って、江戸時代後期から大正時代初期まで、明石付近で爆散式の砲弾に入れる鉛玉を鋳造していたという説がある。
※爆散式の砲弾 = 目標に着弾すると中の火薬が反応して二次爆発を起こす砲弾。ガラスの欠片、釘、鉄粉、石などが入っていた。

おいおい、たこ焼き器で大砲の散弾を作ってたとか、バカにすんなよ、と、にわかには信じ難い話だが、実は鉄の融点が1500℃なのに対して鉛は300℃ちょいで溶けるので、溶けた鉛を流し込むのは全然不可能ではない。
しかも鉛は液化すると、ちょうど、水に溶いた小麦粉のような粘性を持つので、本当に、たこ焼きを作るような手順で、長~い鉄のくくり棒で、くるくるっとやって、鉛を球体に加工していたという。

敗戦後のどさくさの中で鉄型は人から人へ、闇市を流れていったが、「鉛くくり職人」の一部が調理器具として転用することを思いつき、たこ焼き屋の前身を作ったという。

ちなみに当時は物資が乏しく、うどん粉を水で薄く伸ばした柔い団子のようなものを作ることしか出来なかったそうだ。
大阪の各地では現在もその頃からの鉄型を保持し続けているたこ焼き屋もあるという。

まぁ、あくまで一説だ。

さらにここに、わたし個人の研究と見解による第三説を加えようと思うが………

それはまた、次回。

2018/10/08

蛸と鉄板①

物凄く久しぶりに、ミナホに出演しました。
しかもFoZZtone時代に初めて出たのと同じハコ。
なんかもう一回デビューし直した気分です。
ご来場頂いたみなさん、どうもありがとう。

サニーガイズのメンバーは当日帰りで、ちょっとかわいそうだったな。夜走りで申し訳ない。
せめてみんなで、たこ焼きを食べれて良かった。

たこ焼きと言えば昔「たこ焼きが先か、たこ焼き用の鉄板が先か」ということについて深く考察してみたことがあるんだけど、

たこ焼きって、ほんと謎の多い食い物だと思う。

だってまず、たこ焼きはあの鉄板無しには決して作れない料理なわけでしょ?

そんな不自由な食べ物って他にある?フライパンとかオーブンとかレンジとか、魚焼きグリルを使っても作れないんだよ?

これがお好み焼きなら、鉄板でも、フライパンでも、ホットプレートでも、なんなら真夏の太陽に熱せられたボンネットの上でも焼ける。
でもたこ焼きは、あの鉄板、あの丸い凹みがいっぱいついたあれね、あれじゃなきゃ、作れない。

そして、たこ焼き用の鉄板も、基本的にはたこ焼きしか焼かない。

家庭用のたこ焼き器を使ってアヒージョとか、ホットケーキミックスを焼いたりする人もいるし、組の金を持ち逃げしたチンピラの顔面に醜い焼け跡をつけるのに使うって人もいるけど、
それらは別にたこ焼き用の鉄板を使わなくても出来る料理だ。あえてたこ焼き器を活用するなら、というレシピに過ぎない。
プロはそんなことしない。あの鉄板ではたこ焼きしか焼かない。

つまり、たこ焼きと、たこ焼き用の鉄板は、お互いの存在なくしては決して成立出来ないのだ。鍵と鍵穴みたいなものだ。
それどころか、たこ焼きとは、あの鉄板そのものの名称と言っても過言ではない。
たこ焼きのたこ焼きたるアイデンティティーは全てあの鉄板が握っているのだから。

こうなるとやはり、「卵が先か鶏が先か」という議論と同様に「たこ焼きが先か鉄板が先か」という問題になってくるのだが……

恐ろしく長くなりそうなので、続きはファンクラブサイト、ワタラボで。

ぐぇへへへへへ。